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ただいま
イスタンブールからテル・アヴィヴのベン・グリオン空港に向かう飛行機の中。
イスラエルの人がそのほとんどを占め、機内は飛行中ウロウロと流浪する人たちでまったく落ち着かない。

「すみません、前の席のおじさん。
なんだかものすごーく席と席との間隔が狭いから、
リクライニング、ちょっと起こしてもらえません?」

「あ、ごめんごめん!」

「いえいえ、こちらこそ。どうもありがと」

そんなごくごくなんでもない会話になると疑いもしなかった。
しかし、ヨーロッパの風に吹かれすぎたかな。

「えー!おれ、ちゃんとリクライニング、起こしてるやんけ!
座席、倒してないわい!」

「・・・・いや、思いっきりリクライニングになってますって・・・」

「・・・・ちっ!」


・・・・・・・・イスラエルは、もうすぐそこ。



地中海上空から、キラキラと輝くテル・アヴィヴが目に入った。
その直後ベン・グリオン空港に降りつと、無事に入管を通り過ぎた。
すでに時計は夜中の2時過ぎ。
空港の外に出ると思ったよりも空気がヒヤリとして、本当に中東かしら。

いつもの場所に向かうと、そこにあるはずのエルサレム行きの乗りあいタクシーが、
なぜだか一台も見当たらず。その代わりに、乗り場には黒い人だかり。
その横に荷物の詰まれたままのたくさんのカート。

歩道の一辺には黒い帽子に黒いスーツ。
正統派ユダヤの学生たちは通行人を背にして、
飛行中には祈れなかったのか、エルサレムの神殿の方向へと祈りを捧げていた。

車道に近いところにカートを止めて、彼らの祈る姿を見つめながら、
乗り合いタクシーが来るのを待った。

「ちょっと!どいてんか、そこっ!」

背後から聞こえてきた男の声。

「はっ?」

「そこ、じゃまやねん!カート、道の脇に寄せてや!」

「はっ?寄ってるやん、思いっきり。・・・これ以上、どこに寄せろと?!」

咄嗟に私のセルフディフェンス(自己防御)・システムが作動し始める。
ああ、イスラエルに帰ってきたな、と思う瞬間。

おなかのでっぶりとした旅帰りのおっちゃんが、カートを押しながら私に道をあけろという。黒い服の学生たちと私の間にはカートを押して通れる十分な空間があるのにも。

しかし、そうは問屋が卸さない。おっちゃんは生粋のイスラエル人。

家族以外の女性と話すことも、肩を並べることもなく、
バスでも女性の横には座らない黒い服の学生たちのほうを指して、
おっちゃんはエラソな顔して私にそちらへ寄れという。

「ヌ?」
だから?

私はイラッとして肩をすくめて一言。

「マ、ヌ?」
だから、ってなんや?

「そやし、もう通れてるやん、おじさん」

私と学生たちの間を、何の問題もなく通り抜けたおっちゃん。





「Welcome to Israel!」

「こんなところまでやって来るあんたは変わり者。まったく、ごくろうさんやね~」

と、ため息混じりに訳した。




イスラエルに帰ってきました。
by ck-photo | 2006-05-01 23:19 | 旅の空


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