アッバス君へ。議長当選へのはなむけの言葉。
こんなドキュメンタリー番組を見た。

ヨニ君は若きユダヤ人で、家族とともにエルサレムでごくごく普通に暮らしていた。しかし、数年前のあの日、彼の乗ったバスでパレスチナ人が自爆して、多くの人たちが帰らぬ人となった。そして高校へ通っていたヨニ君も帰らぬ人となった・・・。

ヨニ君の母マーシャさんは、ヨニ君の一部でも生き続けて誰かの生を助けるのならばと、彼の腎臓を臓器移植へ提供することを決め、そしてすぐに医者からヨニ君の腎臓を必要とする瀕死の幼い少女がいると告げられた。

マーシャさんに告げられたこの少女は、西岸地区に住むパレスチナ人だった。ヨニ君の命を奪ったのはパレスチナ人であり、ヨニ君の腎臓に生死が託されているこの少女またも同じくパレスチナ人だ。そして当時パレスチナ人の70%が自爆攻撃を支持していた現状でも、イスラエルの病院ではこのような病人に対してパレスチナ人もイスラエル人も宗教も何も関係はない。

マーシャさんは、彼女の息子の命を奪ったパレスチナ人と、そしてこのパレスチナ人少女との間で葛藤しながらも、移植を許可を決意し、数年後に東エルサレムとパレスチナ自治区のラマッラという町の間に住むこの少女、ヤスミンちゃんの家を初めて訪ねる。

エルサレムからこのパレスチナ人地区である西岸地区へユダヤ人の女性が一人で尋ねるのはとても危険だ。パレスチナ人運転手のタクシーの車内からマーシャさんは緊張した面持ちで外を眺める。この時に、ヤスミンちゃんの父親が画面に向かってこう語る。ヤスミンちゃんが緊急にイスラエルの医者にかからなければならないたびにチェック・ポイントで引っかかり、娘が病気だといっても疑われるか、相手にされずに立ち往生するのだと。これは過去に産気づいた妊婦や病人を装ったりなんだりしてイスラエル側に入り自爆したパレスチナ人がいるから、というのも理由の一つである。

マーシャさんは西岸地区へ入るチェック・ポイントを通り抜け、ヤスミンちゃんの家を訪れる。

ヤスミンちゃんの父親が笑顔で玄関の扉を開ける。そして家の中に案内され、彼女ははじめて見る元気な、ヨニ君の一部と共に生きているヤスミンちゃんの姿に涙したその姿に、スカーフをかぶったヤスミンちゃんの若い母親は「パレスチナ人もイスラエル人も同じよ」とやさしく告げてマーシャさんの肩を抱き、マーシャさんはその言葉に胸が詰まる。

6歳ぐらいであろうヤスミンちゃんは、彼女の腎臓がいったいどこから来たのかを両親から告げられ知っていて、生前の笑顔のヨニ君の写真とヤスミンちゃんの写真をつなげた大きな一枚の写真を抱えてマーシャさんの隣に座り、彼女の父親は「これは君のお兄さんのヨニ君だよ」と囁く。

と、まあ、言ってみればイスラエルのユダヤ人とパレスチナ人の両者を絡めた典型的なお涙頂戴物語的ドキュメンタリーなのだけど、それなりに見終わった後に心に残るものもあった。パレスチナの次の世代の見るイスラエルとの関係に、少しは期待ができるのだろうか。

これまでのパレスチナ自治政府は難民やイスラエルの攻撃による子供の死を売り物にして世界の注目を集めようとしてきたし、アラファト議長が亡くなった時には、世界の長番付10位内に入るほどの財産または資産が暴露された。自治区の1人当たりの国民所得は第二次世界大戦後にアメリカが実行したマーシャル・プランというヨーロッパの復興計画の時の金額よりもはるかに上回り、しかしそれでもヨーロッパは見事に再興し、パレスチナ自治区内にはいまだまともな設備の調えられた病院のひとつもないということは一体どういうことなのだろう。

パレスチナとイスラエル、どちらがいい悪いじゃなくて、そろそろいい加減に現実的な解決策を「実行」してほしいところ。世界はこの件に関しては相変わらずで、でもアッバス君よ、君はこれからどうするのだろう。

そして、ニッポンの首相さん小泉さんよ。アラファト議長亡き後、この1月10日にアッバス議長誕生となったお祝いなのか何なのか、ニッポンはほんの63億円ほどの緊急資金を補助するらしいね。これだけの金額がほぼ無駄(おそらく)に流れるのならば、日本の今もなお再興できていない神戸や新潟や、その他の国内でもこの資金を当てるべきところは色々とあるんじゃないだろうか。
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by ck-photo | 2005-01-11 06:06 | 戦争と平和


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