(旧ブログに載せたヘブライ語の名前ですが、リクエストがあったのでもう一度こちらに載せておきますね。)
日本の人の名にはたいていの場合、それぞれ意味がありますが、外国の人の名はどうでしょうか。現在の一般的な欧米の名前では、意味を持たない名、または単なる響きとなっているようです。しかし、それらの名の語源をたどれば、旧約聖書に登場するヘブライ語に基づく名が数多くあります。
旧約聖書に登場する名は、その人の元々の名というよりも、旧約聖書の各エピソードの役柄に応じて名が付けられています。なので、旧約聖書を知らずに名の意味だけを読んでみるとかなり意味不明のことも。
例えば、ヤコブ(英語圏ではジェイコブまたはジェームス)という名には、「かかと」と「要領よく人
の裏をかいてゆく」という意味があります。これは、ヤコブが生まれた時に、双子のエサウのかかとをつかんで生まれてきたことから「かかと」という名に。そしてもう一つの「要領よく裏をかく人」という意味は、ヤコブは一家の柱であり、子供たちの父として日常的に生活してゆくには、要領よく生きてゆかねばならなかった。そこでヤコブは「かかと」のほかに「要領よく裏をかく人」という意味となりました。
そののち、ヤコブは神によって「イスラエル」と改名します。「イスラエル」は一国の名でもあり、またユダヤの民の名。「イスラエル」とは、神に向かって戦う人という意味ですが、これは神に反感して戦うのではなく、神と対話するという意味において戦う人ということです。そこで、旧約聖書では、ヤコブは家庭の人として登場する時にはヤコブと呼ばれ、民の長としての場合はイスラエルと呼ばれています。
では、男性の名前からスタート!名前の横の( )内は同じ名前の英語読みです。
名前 その意味と説明
↓ ↓
■アダム : 人 (ヘブライ語では土をアダマといい、神はアダマから人を創ったことから)
■アブラハム : 国民の父 (アブラハムの元々の名はアブラムでしたが、
アブラハムとなることで、すべての父という意味になった)
■ノア : 休む、慰める (ノアの箱舟の話より。
ノアの時代、洪水によって文明が途絶えたことから)
■アベル : 息を吐く (吐かれた息は消え、何も残らない。彼の後には何も残らないと言う意味)
■カイン : 何かを完成する
■イツハック (アイザック) : 笑う (神はすぐにサラが妊娠出産すると告げたが、
100歳近い夫にはそれは無理だとサラが笑ったことから。
イツハックはサラとアブラハムの息子)
■ヤコブ (ジェイコブ、ジェームス) : かかと (双子の兄弟のエサウのかかとをつかんで生ま れたことから)、要領よく裏をかく人
■エサウ : 赤い (誕生時に全身が赤かった、行動が早く鼓動が早いことから)
■ヨセフ (ジョセフ) : 彼は加わる (ラヘルの子供として加わったことから)
■モーシェ (モーゼス) : 水から引き上げられた、生き残る (赤ちゃんの時にナイルの水から 引きげられた、またはユダヤの民をエジプトから引き上げたことから)
■アロン : 力の山
■サムエル (サミュエル) : 神は聞いた (神がサムエルの母親ハナの願いを聞き、
サムエルが生まれたことから)
■イェフダ : 神に感謝する (母親のレアが神に感謝したことから。
ヘブライ語ではユダヤはイェフディムと呼ばれますが、
これは神に感謝するというこのイェフダという意味から)
■ベンヤミン (ベンジャミン) : 右手の息子、南の息子
(南部のヘブライの民の長となったことから)
■ヨナタン (ジョナサン) : 神は与えた
■ダヴィデ (ディヴィッド) : 最愛の
■ソロモン : 平和 (シャロムから)
■ミハエル (マイケル) : 神に勝るものはいない (女性はミハル、ミッシェル)
■シモン (サイモン) : 聞く
■ダニエル : 神は私の裁き
■ヨエル (ジョエル、ジョー) : 神は神である
■アリエル : 神の獅子
■バラク : 雷 (過去のイスラエルの首相にいましたね)
■イェホシュア、ヨシュア (ジョシュア) : 神は救う、彼は救う
■イマニエル (イマニュエル) : 神は我々と共にいる
女性の名前です。
■ハヴァ (イヴ) : 命、生きる、息をする (すべての人の母であることから)
■サラ (セーラ) : プリンセス
■ハナ (アンナ) : 神授の才、気品
■ミリアム (マリア) : 苦い
■ラヘル (レイチェル) : 雌羊
■リフカ (レベッカ) : 罠 (息子エサウを罠にかけたことから)
■レア : 雌のシカ、疲れた
■ミハル (ミッシェル) : 神に勝るものはいない (男性はミハエル、マイケル)
■エステル (エスター) : 星 (元々はペルシャ語の言葉)、隠された
■ショシャナ : 百合、バラ
■デボラ : 蜂
■アビガエル (アビゲール) : 私の父は喜び
■ハダル : 貴重な、輝き
■マヤ : 水 (マイム=水、から)
■ナオミ : 愛想のよい、愉快な、心地よい
■ティクヴァ : 希望 (イスラエルの国歌は「ハ・ティクヴァ」。「希望」という歌ですね。)
最近のイスラエルの世俗社会では、ハナ、リフカ、エステルなど女性の宗教的な名前は古臭く、年寄りの名前と笑われることもありますね。しかし、ユダヤの宗教社会では、これらの名は今でもごく普通に新生児に付けられ、サラ・リフカ、デボラ・レアなど二つの名が付けられることも多い。その名にあやかるようにと、子に対する親の思いは国や宗教が異なっても同じなのでしょう。
女性とは反対に、世俗社会でも男性の名前は宗教的な名もまだ付けられることも多いのがちょっともしろいですね。やはりアブラハム、ヤコブ、アロン、モーシェ、など旧約聖書の登場人物の名が一般的ですね。 宗教的ではない名ではエレズ(レバノン杉)やリオール(光)などといった名前がよく見られます。
そして、同じ名前でも、スファラディー系、アシュケナジー系などの系統によって呼び方が変化します。例えばサラという名だと、スファラディー系ではサリットとなり、アシュケナジー系のイディッシュ語ではスリ、スラとなります。余談ですが、トム・クルーズの娘さんはなぜかしらヘブライ語の名でスリちゃんと伝えられていますが、これはヘブライ語ではなくイディッシュ語なのでしょう。
男性の一般的な名のモーシェも、スファラディー系ではそのままモーシェですが、イディッシュ語ではモイシーとなり、モロッコ系などになるとモシコー、「シ」に強調アクセントと、ドスコイっ!なイメージに変化。
と、まあこんなところでしょうか。